この記事の要点・目次
  • 切削は材料を削り、鋳造は溶かした金属を型で固めます。必要な形をどう作るかが違います。
  • 鋳造で形を作った部品に、切削で穴やねじを加工することもあります。二つの加工法は工程の中でつながります。
  • 精度や価格は加工名だけで決まりません。材料、形、型の種類、作る数や仕上げる部分まで見ると理解が深まります。

切削加工は、材料の不要な部分を刃物で削って形を作る方法です。鋳造は、溶かした金属を型に流し込み、冷やして固める方法です。同じ金属の部品でも、形の生まれ方が違います。

ただし、製品が必ずどちらか一方だけで作られるわけではありません。鋳造で作った部品に、さらに機械加工を施すこともあります。二つの方法の違いとつながりを知ると、鉄瓶からエンジンまで、ものづくりの工程が読みやすくなります。

切削加工は、刃物の動きで形を作る

切削(せっさく)では、工具と加工する材料を動かし、不要な部分を切りくずとして取り除きます。平面、穴、溝、ねじなど、必要な形に合わせて加工方法や工具を選びます。

代表的なのが、旋削とフライス加工です。旋削では材料を回転させ、刃物を当てて削ります。フライス加工では、刃の付いた工具を回転させて材料を削ります。どちらも切削ですが、何を回転させるかが違います。

たとえば、角のある材料に段差を作る場面を考えてみます。完成後も残したい部分を決め、その周りの材料を削り取っていきます。下の写真は、フライス盤で段差を加工した実習用の部材です。高さの異なる面が、削ることで作られています。

段差状に削られ、表面に工具の通った跡が見える金属の部材
フランスのIUT de Mantes-en-Yvelinesの加工実習で作られた部材(2023年)。フライス加工で段差を作った例です。加工:Kilyann Le Hen・Térence Mathias。写真・画像:Kilyann Le Hen / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)

「削り出し」という言葉から、材料の塊がそのまま部品へ変わる姿を想像できます。ただ、切削は外形を丸ごと作るときだけの技術ではありません。すでに形がある部品の一部分を削り、必要な寸法や面に仕上げるときにも使われます。

鋳造は、金属を入れる空間を先に作る

鋳造(ちゅうぞう)では、先に作った型の中へ溶けた金属を入れます。この型を「鋳型(いがた)」、できた品物を「鋳物(いもの)」と呼びます。鉄だけでなく、アルミニウム合金や銅合金などにも使われる加工法です。

鋳型の代表例には、砂で作る砂型と、金属製の金型があります。砂型鋳造では、固まった品物を取り出す際に型を壊します。型を壊すことと、砂を捨てることは同じではなく、砂は再利用されます。

もう一つの工夫が「中子(なかご)」です。これは、鋳物の内部に空洞を作るため、型の中に入れておくものです。金属で満たしたくない場所を先に確保する、と考えると分かりやすいでしょう。砂で作った中子は、鋳物が固まったあとに取り除かれます。

クボタは、エンジンの骨格となるクランクケースの製造に、中子を使う砂型鋳造を用いています。外側の形だけでなく、内部の入り組んだ空間も作る。鋳造では、完成後には見えにくくなる「空間の形」を準備する仕事が重要になります。

アルミ鍋を作る工房で、半球状の部分がある砂型を整えている様子
ナイジェリア・カドゥナの工房で行われている、アルミ鍋の砂型づくり(2024年)。本文で紹介する日本企業の工程を撮影した写真ではありません。写真・画像:Kambai Akau / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)

写真はナイジェリアの工房で行われているアルミ鍋の砂型づくりです。鋳造そのものは世界各地で使われる技術であり、日本独自の加工法ではありません。日本の道具や部品を見るときも、共通する原理と、それぞれの製品に合わせた工夫を分けると理解が深まります。

鋳造したあとに、切削で仕上げることもある

切削と鋳造は、形を作る工程と、寸法や表面を整える工程としてつながることがあります。鋳物の加工を手掛ける井山工作所は、鋳造した部品の表面を削る、穴を開ける、ねじ山を作るといった切削加工を紹介しています。

クボタは、鋳造したクランクケースを機械加工する工程も紹介しています。加工方法や工具に加え、求める表面の粗さ、精度、膨張率などを考えて方法を決めると説明しています。型から出した時点で、部品の製造がすべて終わるとは限らないのです。

なぜ後から加工するのでしょうか。二つの部品を合わせる場面を考えると分かります。全体が必要な形をしているだけでなく、接する面や穴の寸法も合っていなければなりません。大きな形を作ることと、組み合わせに必要な部分を整えることでは、確かめる点が違います。

これは工程の役割を理解するための説明で、すべての鋳物に同じ加工が必要という意味ではありません。どの面を、どこまで仕上げるかは、部品の用途や設計によって変わります。

製品紹介に「鋳造」と「切削」の両方が出てきたら、矛盾した説明ではなく、工程を分担している可能性があります。どちらで作ったかに加え、「どの部分を、何のために加工したか」を読むと、その部品の作り方が見えてきます。

加工名だけで、精度や価格の優劣は決まらない

「切削なら必ず高精度」「鋳造なら必ず安い」と、加工名だけで順位を付けることはできません。切削の精度には工作機械や工具が関わり、鋳造にも砂型や金型など複数の方法があります。

また、鋳造は大量生産だけの技術でもありません。精密工学会誌の「鋳造の基礎」では、量産にも非量産にも対応する加工法として整理されています。作る数や形、大きさによって方法を考える必要があります。

製品の説明を読み比べる際は、加工名に続く情報を確かめると、比較の条件が揃います。

知りたいこと 説明から確かめたいこと
どの形を作るのか 外形、穴、内部の空間、組み合わせる面
どこまで仕上げるのか 求める寸法や表面、追加の加工
どんな作り方なのか 材料、型の種類、作る数、工程の組み合わせ

見積もりや加工方法の選定には、さらに具体的な図面や条件が必要です。この表は、製品や工場の説明を理解するための入口になります。

道具の形には、型づくりと仕上げの仕事がある

身近な鋳物の一つが、南部鉄器の鉄瓶です。及源鋳造のOIGENは、型を焼いて用いる「焼型」と、砂を機械で圧縮して型を作る「生型」という製法を紹介しています。どちらも、溶かした鉄を型に入れて固める鋳造です。

同社の生型による製造では、造型や型の運搬に機械を使う一方、注湯や細部の仕上げは手作業が担うと説明されています。「手仕事か機械か」も、製品全体を二つに分ける見方では捉えきれません。

道具の形を考える人、型を作る人、金属を流し込む人、必要な面を加工し仕上げる人。製品によって仕事の分かれ方は違っても、一つの形の背後には複数の工程があります。

次に道具や部品を見るときは、外形だけでなく、穴や接合面にも目を向けてみてください。「この形をどう作り、どこを後から整えたのか」。その問いが、普段は見えないものづくりの仕事を知る手掛かりになります。

出典・参考資料

  1. 笹原弘之「切削加工の歴史・現状とその原理」『特殊鋼』72巻5号(2023年)、1〜5ページ ↗確認日:2026.09.23
  2. 平塚貞人「鋳造の基礎」『精密工学会誌』84巻5号(2018年)、427〜430ページ ↗確認日:2026.09.23
  3. クボタ「鋳造の基礎知識」 ↗確認日:2026.09.23
  4. クボタ「機械加工」 ↗確認日:2026.09.23
  5. 井山工作所「加工技術紹介」(鋳物の切削加工) ↗確認日:2026.09.23
  6. 新東工業「ショットブラストによる鋳物砂落し」(鋳物内部の中子砂の除去) ↗確認日:2026.09.23
  7. 及源鋳造 OIGEN「南部鉄瓶について」(焼型と生型) ↗確認日:2026.09.23
  8. カバー写真の原典:David English「Lathe Center Drilling」 ↗確認日:2026.09.23
  9. カバー写真の利用条件:CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用) ↗確認日:2026.09.23

画像の出典・利用条件

  1. Kilyann Le Hen / Wikimedia Commons:段差状に削られ、表面に工具の通った跡が見える金属の部材 ↗

    CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)(ライセンス)。縮小・WebP変換。トリミングなし。確認日:2026.09.23

  2. Kambai Akau / Wikimedia Commons:アルミ鍋を作る工房で、半球状の部分がある砂型を整えている様子 ↗

    CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)(ライセンス)。縮小・WebP変換。トリミングなし。確認日:2026.09.23

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