この記事の要点・目次
  • 欧州で2026年10月に始まった共同計画は、再生綿の品質・価格・使用割合を比べる試みで、成果の発表はこれからです。
  • 布を機械でほぐすと繊維も短くなります。使う割合だけでなく、糸の太さや用途、求める性能をそろえて見る必要があります。
  • 日本の産地連携は回収原料の使い道をつなぐ事例です。混率に加え、色や強さ、費用と生産経路を確かめることが判断材料になります。

「再生綿を使ったTシャツ」と聞くと、混ぜる割合が高いほど、資源を上手に循環させた製品に思えるかもしれません。けれども、布を再び糸にする途中では繊維が傷みます。再生材を増やすことと、欲しい着心地や丈夫さを保つことを、同時に考える必要があります。

2026年10月6日、オランダのFashion for Goodが、再生綿の品質・価格・使用割合を比較する共同プロジェクト「Cotton Reloop Matrix」を発表しました。新しいのは綿を再生する発想そのものよりも、ブランドや工場が共通のデータで素材を選べるようにしようという試みです。日本の繊維産地を結ぶクラボウの事例と照らすと、再生素材の説明で確かめたい点が見えてきます。

欧州で始まる、再生綿を同じ条件で比べる取り組み

Cotton Reloop Matrixは、機械でほぐして再生した綿の糸や繊維が、ブランドの要求仕様をどこまで満たせるかを調べる計画です。C&AやBESTSELLER、Reformation、Interloopなどが参加し、繊維の品質検査を手がけるUster Technologiesも加わります。

Fashion for Goodが背景に挙げるのは、各社が別々に試験しており、品質・価格・再生材の割合を横断して見通せる情報が不足していることです。「再生綿を使える」とわかっても、欲しい生地の条件に合うか、どの価格なら採用できるかが分からなければ、発注にはつながりません。

計画では、織物と編物を対象に品質の比較表を作り、10種類の実証用生地と5つの品質改善の試験を通して、実際の工場条件で確かめる予定です。得られた知見は、紡績の作業手順や今後の課題を示す資料として共有するとしています。

ここで注意したいのは、これは開始の発表だという点です。10月12日時点で確認した資料には、共通条件で試した生地の成績や価格の比較結果はありません。「再生綿の品質問題が解決した」「どの製品でも高い比率で使えるようになった」という成果の発表ではないのです。

布をほぐすと、糸だけでなく繊維も短くなる

機械による綿の再生は、服の糸をそのままほどいて巻き直す作業とは違います。布や糸を細かくほぐし、繊維の状態に戻してから、新しい糸を作ります。日本でいう「反毛(はんもう)」は、このように繊維をわた状へ戻す工程です。

色や編み目の異なる使用済みの繊維製品が重なっている
使用済み繊維製品の資料写真(2014年撮影)。素材組成は未確認で、すべてが綿という意味ではありません。色・構造の違いを見るための写真です。写真・画像:Ellen Sillekens / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)

米国の綿の研究・普及団体Cotton Incorporatedの解説では、再生原料は工場で出る裁断くずなどと、使われた後の衣服やタオルなどに分けられます。後者は色や混紡の種類が多く、分別に手間がかかります。同じ「回収した布」でも、組成のわかる工場端材と、いろいろな家庭から集まった服では出発点が異なります。

Cotton Incorporatedによれば、機械でほぐす際の力で、繊維が切れたり絡まったりします。回収できた重量が、そのまま同じ性能の糸に戻るわけではありません。

Cotton Incorporatedの繊維品質の解説は、繊維の長さと長さのそろい方が、糸の強さや均一さ、紡績のしやすさに関係すると説明しています。綿はもともと短い繊維を集めて糸にする材料です。その一本一本がさらに短くなれば、元と同じ作り方・同じ配合でよいとは限らなくなります。

ここで必要になるのが、再生繊維に別の原料を混ぜる割合や、作る糸・生地の仕様の調整です。再生率の数字だけを上げるのではなく、その素材で何を作るかまで決める。欧州の新計画が、繊維だけでなく実際の生地とブランドの仕様を結び付けようとしている理由も、ここにあります。

日本の産地連携は、回収した後の使い道までつなぐ

日本側の具体例は、クラボウの再資源化システム「L∞PLUS(ループラス)」です。クラボウは2021年9月、今治タオル工業組合と奈良県靴下工業協同組合との連携を発表しました。今治の端材を再資源化し、奈良の靴下向けに原糸を供給する取り組みを、当時すでに試験的に始めていたとしています。

タオルの端材が、次もタオルに戻るとは限りません。別の産地の製品に使う道も作ることで、回収する側と、再生した糸を使う側をつなぐ事例です。ただし、この発表は2021年のもので、現在の生産量や、参加企業全体での普及率を示すものではありません。

木の枝に掛けられた白い綿糸の束と背後の布
綿糸の束と布の資料写真(2024年撮影)。L∞PLUSの製品や日本の産地を撮影したものではなく、再生綿かどうかも確認されていません。写真・画像:পাপৰি বৰা / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)

L∞PLUSの公式FAQには、使い方の条件も記載されています。再資源化原料の割合がおよそ10〜50%、綿番手で7〜30番の糸に対応可能としていますが、条件によって変わります。綿番手は糸の太さを表す指標で、数字が大きいほど細くなります。この範囲は再資源化原料についての案内であり、どんな綿の古着でも50%使えるという保証ではありません。

クラボウ自身も、通常の糸に比べて短い繊維が多く、混率や番手によっては強度が低くなり、毛羽が多くなる傾向を説明しています。色も回収原料に左右され、色別に分けて作る場合には別途費用がかかります。素材の特徴を隠さず、製品の用途と合わせる必要があることが、商談の前提になっています。

生産拠点の時点にも注意が必要です。2021年の発表では安城工場が登場しますが、『クラボウ統合報告書2025』は、同工場の操業停止後、TICで反毛した原料をタイ・クラボウで紡績し、既存顧客に対応していると説明しています。TICは、繊維の研究開発拠点であるテキスタイルイノベーションセンターです。日本の産地と結ぶ仕組みを、そのまま「すべて国内で完結する循環」と読むことはできません。

欧州の新計画は複数社で共有する評価の仕組み、日本の例は原料回収から再製品化までの事業の仕組みです。役割も段階も違い、同じ糸を同じ条件で試した比較ではありません。比較から読み取れるのは、「性能を判断する情報」と「実際に作って届ける経路」の両方が必要だということです。

再生材の割合と一緒に、何を確かめればよいか

素材や製品を選ぶとき、再生材の使用割合は大切な情報です。ただし、その数字は製品の丈夫さや、環境負荷の小ささを一つで証明するものではありません。今回の資料を、仕事や買い物で使える問いに置き換えると、次のように整理できます。

見るところ 一緒に確かめたい条件
再生材の割合 何を回収した原料か。糸・生地・製品のどの範囲の割合か
糸や生地の性能 どの太さ・組成・用途で、どんな試験をした結果か
色と手触り ロットで変わる特徴か、一定の色にそろえる仕様か
価格と供給 分別などの費用を含むか。どこで再資源化・紡績するか

たとえば、同じ色のTシャツを繰り返し追加生産したい場合と、回収原料ごとの色の違いを楽しむ小物を作りたい場合を考えてみます。これは実在の商品同士の比較ではなく、仕様の違いを考える仮の場面です。前者は色の再現性を確認する必要があり、後者は色の変化をデザインへ取り込める可能性があります。同じ再生糸でも、採用の判断は変わります。

環境面も、混率だけで優劣を決められません。回収・加工・輸送の条件を含めて評価する必要があり、今回の欧州計画と日本事例の資料から、どちらの製品がどれだけ環境負荷を減らすかまでは比較できません。

今後、Cotton Reloop Matrixの成果が公表されたら、まず生地の用途と試験条件を見たいところです。高い混率を達成したかだけでなく、必要な性能と価格がどの条件で両立したかがわかれば、日本の製品企画にも照らし合わせやすくなります。再生綿の価値は、回収した量から、実際に使い続けられる製品へつながるところまで見て判断したいものです。

出典・参考資料

  1. Fashion for Good:Cotton Reloop Matrix開始発表(2026年10月6日) ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  2. Fashion for Good:Cotton Reloop Matrixの計画 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  3. Cotton Incorporated / CottonWorks:Recycled Cotton ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  4. Cotton Incorporated / CottonWorks:Cotton Fiber Quality ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  5. クラボウ:今治・奈良の産地間連携(2021年9月1日) ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  6. クラボウ:L∞PLUS公式FAQ・再資源化の工程 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  7. クラボウ統合報告書2025:冊子35〜36頁(TICと生産体制) ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  8. カバー写真:Cotton thread reels / johannrela ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12
  9. カバー写真の利用条件:CC BY 2.0 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.12

画像の出典・利用条件

以下は元画像の説明と利用条件です。配信用に縮小・形式変換を行い、一覧では表示枠に合わせて一部を切り取って表示しています。

カバー画像

綿糸の資料写真(2006年撮影)。今回の再生綿プロジェクトやL∞PLUSの製品ではありません。

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  1. Ellen Sillekens / Wikimedia Commons:色や編み目の異なる使用済みの繊維製品が重なっている ↗(新しいタブで開く)

    CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)(ライセンス(新しいタブで開く))。原版を無加工で保存。配信時に縮小・形式変換。確認日:2026.10.12

  2. পাপৰি বৰা / Wikimedia Commons:木の枝に掛けられた白い綿糸の束と背後の布 ↗(新しいタブで開く)

    CC BY-SA 4.0(掲載画像にも適用)(ライセンス(新しいタブで開く))。原版を無加工で保存。配信時に縮小・形式変換。確認日:2026.10.12

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