この記事の要点・目次
- 綿は種子の毛、リネンとラミーは茎の靱皮から採る植物繊維です。
- 組成表示の「麻」だけではリネンかラミーかを特定できず、混用率だけで着心地も決まりません。
- 吸水・吸湿・乾燥を分け、布のつくりと製品の取扱表示を合わせて比較します。
綿と麻の大きな違いは、繊維を採る場所と、その性質です。綿(コットン)はワタの種子の表面に育つ毛。衣服に使われる麻の代表であるリネンとラミーは、植物の茎から採る繊維です。綿はやわらかな肌触り、麻は張りやさらりとした感触が特徴として挙げられます。
ただし、「綿なら暑い」「麻なら必ず涼しい」とは決められません。同じ綿でも、Tシャツとデニムでは厚さも伸び方も違います。シャツやシーツを選ぶときは、素材名に加えて、糸・織り方・仕上げと、製品の手入れ方法まで読むと違いが見えてきます。
綿は種子の毛、麻は茎から採る繊維
綿は種子の毛、リネンとラミーは茎の靱皮(じんぴ)から採る繊維です。いずれもセルロースを主成分としますが、綿はワタ、リネンは亜麻(あま)、ラミーは苧麻(ちょま)と、原料の植物も異なります。
ボーケン品質評価機構(BOKEN)は、綿の繊維を種子の表皮細胞が成長したものと説明しています。白いふわふわの部分は花びらではなく、種子のまわりに育った繊維です。一方、リネンやラミーは茎の外側に近い靱皮という部分から得られます。

素材の入口を整理すると、次のようになります。
| 呼び方 | 原料になる植物と部位 | 衣服を選ぶときの見方 |
|---|---|---|
| 綿・コットン | ワタの種子の表面の毛 | やわらかさに加え、糸や布の厚さを確認する |
| リネン・亜麻 | 亜麻の茎の靱皮 | 張りとしなやかさを、実際の生地で確かめる |
| ラミー・苧麻 | 苧麻の茎の靱皮 | さらりとした感触や、硬さの感じ方を確かめる |
麻の張りは、単なる見た目の特徴ではありません。BOKENはリネンについて、繊維が伸びにくく剛直であることが張りやシャリ感につながると説明しています。
一方で、曲がった繊維が元の形に戻りにくく、しわが残りやすい面もあります。風合いの魅力と扱いにくさは、別々の理由で生じるとは限らないのです。
「麻100%」だけではリネンとは限らない
組成表示の「麻」には、リネンとラミーの両方が含まれます。「麻100%」という表示だけで、リネン製品だとは判断できません。
消費者庁の繊維製品品質表示規程では、亜麻には「麻」「亜麻」「リネン」、苧麻には「麻」「苧麻」「ラミー」という指定用語があります。そのため、ラベルに「麻100%」とだけ書いてあっても、リネンなのかラミーなのかは、その表示だけでは特定できません。
リネンを選びたい場合は、商品説明にも亜麻やリネンと書かれているか確認します。広い意味で麻と呼ばれるヘンプなどもありますが、ここでいう組成表示の「麻」は亜麻と苧麻が対象です。植物の総称と、ラベルで使える名称を分けて読む必要があります。

「綿70%・麻30%」なら、わかるのは使われている繊維の割合です。やわらかさや涼しさが、その比率で足し合わされるわけではありません。
組成が同じでも、糸の太さや撚り、布の構造が違えば、仕上がりは変わります。綿麻という名前は比較の出発点になりますが、使い心地の答えまでは含んでいません。
涼しさは糸と布のつくり方でも変わる
綿や麻の着心地は、繊維の種類だけでなく、糸の組み方や仕上げでも変わります。綿の布にも、やわらかなTシャツと、しっかりしたシャツがあります。この違いを考えるには、「何の繊維か」と「どう布にしたか」を分けると理解しやすくなります。
National Cotton Councilの製造解説では、織物はたて糸とよこ糸を組み合わせ、編物は糸で輪をつくってつなぐ構造として説明されています。素材が綿で共通していても、糸の組み方は同じではありません。
綿の加工でも、短い繊維を除くコーマ工程が使われます。BOKENによれば、この工程を通した糸は短い繊維が少なく、毛羽も目立ちにくくなります。「綿100%」には、こうした違いが含まれています。

麻についても同様です。身近な例が、新潟県小千谷市の麻織物「小千谷縮(おぢやちぢみ)」です。小千谷織物同業協同組合は、苧麻を原料に、よこ糸に強い撚りをかけて織り、仕上げの湯もみでシボを出す工程を紹介しています。
シボとは、布の表面にできる細かな凹凸です。
つまり、小千谷縮の表情は「麻だから」だけでは説明できません。原料の性質に、糸の撚りと仕上げの仕事が重なっています。この例からも、布を選ぶときに素材表示と表面のつくりを一緒に見る意味がわかります。
無印良品の素材説明でも、麻の張りによる肌離れや、強く撚った糸のシャリ感が挙げられています。ただし、触れた瞬間にひんやりすることと、着ている間ずっと涼しいことは別です。
比較するシャツの厚さ、裏地、肌との隙間まで違うなら、着心地の差を綿と麻だけの差としては扱えません。
吸水・吸湿・乾きやすさを分けて考える
吸水は、汗や水滴など液体の水を取り込むことです。吸湿は、空気中の湿気を取り込むこと。取り込んだ湿気を外へ放つ性質は放湿と呼ばれます。乾燥は、布に含まれた水が外へ蒸発していく過程です。

BOKENの試験解説でも、これらは分けて評価されています。吸水性の滴下法では水滴が生地に吸収されるまでの時間を見ます。吸放湿性では湿度を変えた環境で試験片の質量変化を追い、速乾性の評価では水を与えた試料から時間とともに水が減る様子を調べます。
水をすぐに吸う布でも、その結果だけから洗濯後に何分で乾くとは言えません。乾きやすさを比較するなら、生地の条件に加えて、与える水分や温度・湿度などを揃える必要があります。
本記事では条件の揃った綿と麻の製品比較を実施していないため、乾燥速度の順位はつけません。
この読み分けはタオルにも役立ちます。今治タオルの「5秒」が測るものも、水を吸う性質を確かめる試験の話です。
ふんわりした触感や、干してから乾く時間まで同時に保証する数字ではありません。
シャツとシーツは、表示・触感・手入れを合わせて選ぶ
素材の特徴を暮らしに結びつけるなら、最初に「どこで、どう使いたいか」を決めると比較しやすくなります。次の表は素材の順位ではなく、購入前に揃えて見たい条件です。
| 選ぶもの・使い方 | 素材名と合わせて見ること |
|---|---|
| 肌に直接着るシャツ | 生地と縫い目の触感、透け方、体を動かしたときのつっぱり |
| シーツや枕カバー | 表面の凹凸、硬さの好み、自宅の洗濯・乾燥方法との相性 |
| 仕事着として着るシャツ | しわの許容度、アイロンがけの要否と取扱表示 |
| こまめに洗う日用品 | 洗濯機や乾燥機の使用可否、縮みへの注意、干す場所 |
たとえば、しわをなるべく整えて着たいシャツと、自然な凹凸を楽しみたいシャツでは、同じ風合いへの評価も変わります。麻の張りを心地よく感じる人もいれば、硬さが気になる人もいます。
店頭で触れられるなら表地だけでなく縫い目も確かめ、通販なら組成率だけでなく生地の説明や取扱表示まで確認したいところです。
綿にも麻にも、しわや縮みへの注意はあります。また、繊維が濡れると強くなる性質があっても、縫製品を強く洗ってよいという意味ではありません。生地の変形、染色、縫い目、付属品なども関係するため、洗い方は個々の製品の表示を優先します。
「綿か麻か」を決めた後にも、ものづくりの違いは残っています。原料の名前、糸と布のつくり、自分の使い方を順に照らし合わせると、同じ素材の二つの商品も、理由を持って選び分けられます。
出典・参考資料
- BOKEN「綿について」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- BOKEN「亜麻(リネン)・苧麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)について」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- 消費者庁「繊維製品品質表示規程」別表第六 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- 無印良品「衣服素材の特長」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- 小千谷織物同業協同組合「小千谷の織物」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- National Cotton Council「Fabric Manufacturing」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- BOKEN「吸水性試験(JIS L 1907)」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- BOKEN「吸放湿性試験(JIS L 1954・ボーケン規格)」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- BOKEN「吸水速乾性(ボーケン規格・ISO 17617 Method B・MMT)」 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- カバー写真の原典:Alabama Extension / Katie Nichols(CC0 1.0) ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.09.28
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- 本文写真の原典:Jamain / CC BY-SA 4.0 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- 本文写真の利用条件:CC BY-SA 4.0 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- 本文写真の原典:Gordana Adamovic-Mladenovic / CC BY 2.0 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
- 本文写真の利用条件:CC BY 2.0 ↗(新しいタブで開く)確認日:2026.10.01
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カバー画像
成熟前のワタの実。撮影:Katie Nichols / Alabama Extension(2016年)。CC0 1.0。上下トリミング・縮小・JPEG再圧縮。原典と利用条件は末尾参照。
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- Jamain:長く伸びた淡い褐色の亜麻の繊維束 ↗(新しいタブで開く)
CC BY-SA 4.0(ライセンス(新しいタブで開く))。縮小・JPEG再圧縮。派生画像もCC BY-SA 4.0で提供。確認日:2026.10.01
- ものづくりジャーナル編集部:麻100パーセント、リネン100パーセント、綿70パーセント麻30パーセントの表示例を読み分ける図 ↗(新しいタブで開く)
編集部制作図版。原典の文章を参考に独自構成で作図。原典図版の転載・トレースなし。PNG出力。確認日:2026.09.28
- Gordana Adamovic-Mladenovic:手織りのリネンタオルの糸の交差と表面の凹凸 ↗(新しいタブで開く)
CC BY 2.0(ライセンス(新しいタブで開く))。中央を横長にトリミング・縮小・JPEG再圧縮。確認日:2026.10.01
- ものづくりジャーナル編集部:液体の水を吸う吸水、湿気を取り込んで放つ吸放湿、水が蒸発する乾燥の違いを示す図 ↗(新しいタブで開く)
編集部制作図版。原典の文章を参考に独自構成で作図。原典図版の転載・トレースなし。PNG出力。確認日:2026.09.28



