この記事の要点・目次
  • 「5秒」は吸水性試験の基準で、タオルが乾く速さや使い心地の全てを表す数字ではありません。
  • 表面の輪っかはパイルという糸の構造。糸の準備から織り、仕上げ、検査まで、異なる仕事がつながっています。
  • ブランドの認定を確かめたうえで、吸水性、乾きやすさ、肌触りを分けて比べると、用途に合う一枚を選びやすくなります。

今治タオルの「5秒ルール」は、吸水性を確かめる品質基準の一つです。公式ブランドサイトでは、タオルの試験片を水に浮かべ、5秒以内に沈み始めるかを見るものと説明されています。体を5秒で拭ける、洗濯したタオルがすぐ乾く、といった意味ではありません。

愛媛県今治市には、糸を撚る、染める、織るなど、タオルづくりに関わる工場が集まっています。いつもの一枚を「水を吸う布」として見直すと、表面の小さな輪っかから、産地の仕事や品質の確かめ方が見えてきます。

「5秒」の前に、産地名とブランド認定を分けて考える

今治で製造されたタオルが、全て「今治タオルブランド商品」になるわけではありません。今治タオル工業組合は、独自の品質基準を満たした商品を認定しています。買うときには、産地の説明と、ブランドの認定に関する表示を分けて読むことが大切です。

吸水性の試験には、水に浮かべた試験片の沈み方を調べる「沈降法」が使われます。工業組合が公表する基準は、JIS L1907の沈降法で5秒以内。洗っていない状態と、3回洗濯した状態の両方で基準を満たす必要があり、後者は洗濯後に乾燥機を使う条件です。

未洗濯と3回洗濯後の両方で、沈降法の5秒以内という基準を満たす必要があることを示す図
吸水性試験の条件を整理した編集部制作図。比重が低く沈降法に適さない素材については、本文に記した別の判定条件があります。写真・画像:ものづくりジャーナル編集部 / 編集部制作図版

ただし、素材によっては別の判定条件があります。比重が低く沈降法に適さないものは、沈降法で不合格でも、水滴の吸収を調べる滴下法で、未洗濯と3回洗濯後のいずれも1秒以内なら合格にできるとされています。「全ての認定商品が同じ方法で沈む」と受け取らないようにしましょう。

認定では、毛羽の抜けやすさや色落ち、洗濯による寸法の変化なども調べます。「5秒」は品質の一面を伝える数字であり、全ての使い心地を一つに採点したものではありません。認定を確認したあとには、自分がどう使うかという選択が残ります。

表面の輪っかは、糸を織り込んで作る

タオルを近くで見ると、細かな糸が輪を描いています。この部分が「パイル」です。表面に綿を貼り付けているのではなく、輪になる糸を生地に織り込んで作ります。

日本タオル卸商連合会の解説では、パイル生地には、土台になるたて糸、横に通るよこ糸、輪っかを作るパイル用のたて糸があります。土台を作る糸と、表面に立ち上がる糸が組み合わさって、一枚の布になっているのです。

緑色のタオルの表面を接写した、細かな糸の輪っかと縁の縫い目
パイル生地の接写「Frottee-Handtuch」(2014年撮影)。原典に製造元・産地の記載はなく、今治タオルの認定商品を示す写真ではありません。写真・画像:Anna reg / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 Austria(掲載写真にも適用)

輪になった部分は、肌との間でクッションの役割を果たします。平らな布とは違う、ふんわりした手触りも、この構造から生まれます。ただし、写真で輪の長さを見ただけで吸水性の優劣までは決められません。形を見ることと、条件をそろえて性能を測ることは、別の確かめ方です。

もう一つ見たいのが、縁の縫い目です。短い辺の折り返して縫われた部分は「ヘム」、長い辺は「耳」と呼ばれます。肌に触れる広い面だけでなく、裁断した生地の端をどう始末するかにも仕事があります。表面の糸と端の仕上げに目を移すだけでも、タオルが一つの加工でできているわけではないことがわかります。

織る前と、織った後にも仕事がある

タオルの製造というと、織機で布を織る場面が思い浮かぶかもしれません。その前には糸を用意する仕事があり、後には生地を仕上げ、製品として確かめる仕事があります。

今治産地の特徴として紹介される方法の一つが、「先晒し・先染め」です。晒しは「さらし」と読み、ここでは糸の精練・漂白を指します。糸の段階でこうした処理や染色を行い、その後で織る方法です。日本タオル卸商連合会の工程解説も、この方法を対象にしています。

糸作り、糸の加工、織る準備、製織、仕上げ、検査へと進む主な仕事の流れ
先晒し・先染めの主な工程を編集部で簡略化。製品ごとに加工や担当企業の組み合わせは異なり、全てのタオルに同じ工程を当てはめる図ではありません。写真・画像:ものづくりジャーナル編集部 / 編集部制作図版

織る前には、糸を扱いやすくする糊付けや、たて糸・よこ糸の準備があります。織り上がったら糊を取り除き、製品に応じた加工や縫製を行います。最後には、仕様や品質を確かめる工程が続きます。布ができた時点では、まだ仕事は終わっていません。

これらを担う体制は、企業や製品で異なります。同連合会は、必要に応じて関連工場と連携して製造すると説明しています。糸を扱う技術、色を作る技術、生地を織る技術、端を縫う技術。それぞれの仕事をつなぐことも、産地のものづくりです。

「今治だからよい」で話を終えるより、どの工程で何を整え、どう確かめているのかを見る。そうすると、ブランド名の向こうにある仕事を、具体的に捉えやすくなります。

吸水性、乾きやすさ、肌触りを分けて選ぶ

タオルに求めることは、使う場面によって変わります。風呂上がりにたっぷりした肌触りを楽しみたいのか、毎日洗って限られた場所に干したいのか。贈り物として選ぶ場合も、使う人の生活を思い浮かべると、比べる項目がはっきりします。

今治のメーカー、IKEUCHI ORGANICは、自社のタオルを吸水性、速乾性、やわらかい風合い、しっかりした肌触りなどの項目で紹介しています。同じメーカーの製品でも、素材や糸の太さ、パイルの長さなどに違いがあります。

水を吸う、洗濯後に乾く、肌に触れるという三つの場面でタオルの違いを考える図
メーカーが示す比較項目を参考に、選ぶときの観点を編集部で整理。各製品の性能や順位を示す図ではありません。写真・画像:ものづくりジャーナル編集部 / 編集部制作図版

「水を吸うこと」と「洗った後に乾くこと」は別の場面です。5秒の試験だけから、部屋干しにかかる時間や、手で触れたときの好みまでは読み取れません。商品説明ではそれぞれを確かめ、触れる機会があれば厚みや感触も比べるとよいでしょう。

使い始めてからの手入れにも目を向けたいところです。IKEUCHI ORGANICは、柔軟剤の使用によって繊維が水を弾きやすくなり、吸水性が低下する場合があると説明しています。柔らかく感じることと、水を吸いやすいことは、いつも同じ方向に変わるとは限りません。実際の洗濯では、手元の製品の表示とメーカーの案内を確認してください。

次にタオルを選ぶときは、認定の表示を確かめ、表面の糸や縁を見て、使う場面に合う説明を探してみる。毎日手に取る一枚が、糸を整え、織り、縫い、確かめる仕事の積み重ねだとわかると、商品を見る目も少し変わります。

出典・参考資料

  1. 今治タオル工業組合「今治タオルブランド商品認定の品質基準」(2025年4月15日更新) ↗確認日:2026.09.24
  2. 今治タオル公式ブランドサイト(産地の仕事と5秒ルール) ↗確認日:2026.09.24
  3. 日本タオル卸商連合会「タオルの構成&各部の名前やタオルの種類について」 ↗確認日:2026.09.24
  4. 日本タオル卸商連合会「今治産地の主なタオル製造工程」 ↗確認日:2026.09.24
  5. IKEUCHI ORGANIC「はじめての方へ」(比較の観点と手入れ) ↗確認日:2026.09.24

画像の出典・利用条件

  1. ものづくりジャーナル編集部:未洗濯と3回洗濯後の両方で、沈降法の5秒以内という基準を満たす必要があることを示す図 ↗

    編集部制作図版。品質基準の記述をもとに新規作図。原典の画像の転載・トレースなし。確認日:2026.09.24

  2. Anna reg / Wikimedia Commons:緑色のタオルの表面を接写した、細かな糸の輪っかと縁の縫い目 ↗

    CC BY-SA 3.0 Austria(掲載写真にも適用)(ライセンス)。Wikimedia Commons提供の幅1280px縮小版を使用。独自の色補正・トリミングなし。確認日:2026.09.24

  3. ものづくりジャーナル編集部:糸作り、糸の加工、織る準備、製織、仕上げ、検査へと進む主な仕事の流れ ↗

    編集部制作図版。原典の工程説明をもとに独自の構成で新規作図。原図の転載・トレースなし。確認日:2026.09.24

  4. ものづくりジャーナル編集部:水を吸う、洗濯後に乾く、肌に触れるという三つの場面でタオルの違いを考える図 ↗

    編集部制作図版。比較の観点を新規作図。メーカーの比較表の転載・トレースなし。確認日:2026.09.24

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