半導体とは、電気の通しやすさが、金属などの「導体」と、ガラスなどの「絶縁体」の中間にある材料です。 ただし、役立つ理由は「中間だから」だけではありません。材料の組成や構造を工夫すると、電気の流れを制御する部品を作れることが重要です。

スマホで写真を撮る、エアコンの運転を調整する、パソコンで計算する。こうした機能を支える電子部品も、まとめて「半導体」と呼ばれています。

材料なのか、部品なのか。この二つの意味を分けると、難しく感じる半導体の話がつながり始めます。

半導体とは?まず「材料」と「電子部品」を分けて考える

材料としての半導体は、電気の通しやすさで分類される

物質を電気の通しやすさで大きく分けると、次のようになります。

分類 電気の通しやすさ 代表例
導体 よく通す 銅、アルミニウムなど
半導体 導体と絶縁体の中間。加える物質や温度などで性質が変わる シリコンなど
絶縁体 ほとんど通さない ガラス、ゴムなど

これは一般的な材料の性質を整理した表です。実際の通しやすさは、温度や材料の状態によっても変わります。東芝の基礎解説

「半」という字は、電気をちょうど半分だけ通すという意味ではありません。 また、同じ部品の半分が導体、残り半分が絶縁体という意味でもありません。

ニュースでいう「半導体」は、材料を使った部品を指すことも多い

シリコンなどの材料に加工を施すと、トランジスタやICを作れます。トランジスタは電気の流れを制御する素子、ICは複数の素子を小さなチップにまとめた集積回路です。パソコンのCPU(中央処理装置)もICの一種です。ASMLのチップ解説

用語の関係を並べると、次のようになります。

シリコンなどの材料 → トランジスタなどの素子 → 素子を集めたIC → CPUなどの製品

これは理解のための整理で、すべての半導体がCPUになるわけではありません。単体で使うトランジスタもあれば、記憶を担当するICもあります。「半導体工場を建てる」という話では、材料の工場なのか、回路を作る工場なのかにも注目すると、話の対象が明確になります。

なぜ半導体が便利なのか?電気で電気の流れを制御できる

銅線は電気を運ぶのに適しています。一方、コンピューターには、運ぶだけでなく、条件に応じて信号を切り替える仕組みが必要です。その役割を担う基本的な素子の一つが、トランジスタです。

シリコンにごく少量の別の元素を加えて、電気的な性質を調整する加工を「ドーピング」と呼びます。こうして性質を整えた材料と、電極・絶縁膜などを組み合わせて、制御できる構造を作ります。製造時に材料の性質を整えることと、完成した部品を電気信号で動かすことは別の段階です。

トランジスタは「電気で操作する小さなスイッチ」

代表的なトランジスタに、MOSFET(モスフェット)があります。MOSFETでは、ゲートと呼ばれる制御用の電極に加える電圧によって、別の二つの電極の間を流れる電流を調節します。東芝「MOSFETとは?」

働きだけを水道にたとえるなら、電気の通り道が水の通り道、制御する部分が蛇口です。ただし、実際の部品に小さな取っ手があって回転するわけではありません。電気的に流れやすさを変えます。

この性質を利用すると、電流が流れやすい「オン」と、流れにくい「オフ」を切り替えられます。さらに、トランジスタは使い方によって弱い信号を大きくする、増幅の働きもします。東芝のトランジスタ解説

「半導体の仕事はオン・オフだけ」と覚えると、後で出てくるアナログ回路が理解しにくくなるので、まずは代表的な使い方として捉えましょう。

スイッチを組み合わせると、なぜ計算できる?

デジタル回路では、電圧の低い状態と高い状態などを「0」と「1」に対応させます。トランジスタを組み合わせた回路で、この二つの状態を規則に従って変換します。東芝「ロジックICとは?」

たとえば「二つの入力が両方とも1なら、出力を1にする」という規則があります。こうした小さな規則を組み合わせると、数の足し算や比較などを行う回路を作れます。CPUは、そのような回路で命令を処理します。

「小さなスイッチが、自分で考えている」というより、信号の組み合わせを、決められた規則で次の信号へ変えていると考えると理解しやすくなります。なお、0と1を単純に「電流が完全にゼロか、流れているか」だけで区別するわけではありません。

半導体の種類と用途を、役割から整理する

半導体には、材料による分け方、回路による分け方、用途による分け方があります。最初は「機器の中で何を担当しているか」で見ると分かりやすいでしょう。

主な役割 よく聞く名前 何をしているか
計算・制御 ロジック半導体、CPU、GPU、マイコン 命令に従って計算し、機器の動きを制御する
記憶 DRAM、NAND型フラッシュメモリ 処理に使うデータや、写真・ファイルなどを記憶する
信号の調整・変換 アナログIC、データ変換用IC 連続的に変わる信号を増幅したり、デジタル信号に変換したりする
電力の変換・制御 パワー半導体 電源やモーターに使う電力を、必要な形に変換・制御する
光などの検出 イメージセンサーなど 光を電気信号に変えるなど、周囲の状態を捉える

これは役割を理解するために編集部が整理した表です。厳密に重ならない分類ではなく、一つのチップが複数の機能を持つ場合もあります。たとえばスマホなどで使うSoC(エスオーシー)は、計算や画像処理などの機能を一つのチップにまとめたものです。

CPUとメモリは「処理する役」と「覚える役」

文章を書く場面にたとえると、CPUは作業を進める担当、DRAMは作業中のものを広げる机、NAND型フラッシュメモリは保存する引き出しに当たります。これは役割を理解するためのたとえで、機器の内部構造そのものではありません。

DRAM(ディーラム)は電源が切れるとデータを保持できない揮発性メモリです。一方、NAND(ナンド)型フラッシュメモリは電源を切ってもデータを保持します。だから、スマホの電源を切っても保存した写真を後で開けます。ASMLのメモリ分類キオクシアのNAND解説

アナログ半導体とパワー半導体は、計算以外を支える

音や温度など、現実の量は連続的に変化します。それを表す電気信号を増幅・調整するのがアナログ回路の仕事です。デジタル回路で扱える値に変換する回路も使われます。TIのアナログ製品には、アンプ、データコンバーター、電源管理ICなどがあります。TIのアナログ半導体解説

パワー半導体が主に担当するのは、機器を動かすための電力です。充電器やモーターの駆動回路などで、電力を必要な形に変換・制御します。計算が速いことと、大きな電力を適切に扱えることは、別の性能です。東芝のパワー半導体解説

身近な例:スマホで写真を1枚撮ると、何が働く?

カメラを起動して写真を保存するまでを、代表的な役割に分けてみましょう。

  1. 光を捉える。 イメージセンサーが、レンズから入る光を電気信号に変えます。
  2. 画像として処理する。 画像処理を担当する回路などが信号を処理します。作業中のデータにはメモリも使われます。
  3. 写真を保存する。 NAND型フラッシュメモリにデータを保存します。
  4. 各部分へ電力を供給する。 その間も電源管理の回路が、各部分に必要な電力の供給を支えます。

これは特定のスマホの設計を示したものではなく、役割のつながりを説明する例です。光を捉える機能については、ソニーがイメージセンサーの仕組みを公開しています。ソニーの技術解説

写真を撮るという一つの操作にも、検出・処理・記憶・電源という違う仕事があります。「半導体が入っている」とは、一個の万能な部品がすべてをしている、という意味ではないのです。

半導体は何から、どうやって作る?

よく使われる材料はシリコン。ただし、シリコンだけではない

代表的な材料はシリコンで、日本語ではケイ素と呼びます。用途によっては、炭化ケイ素のSiC(エスアイシー)や、窒化ガリウムのGaN(ガン)なども使います。「半導体」は一つの物質の固有名ではありません。

また、シリコンを使ったチップであっても、中身のすべてがシリコンだけでできているわけではありません。電気をつなぐ金属や、電気を隔てる絶縁材料などを組み合わせて、回路を形作ります。

ウエハーに回路を作り、一つずつのチップに分ける

一般的なシリコンのICを例にすると、大きな流れは次のようになります。

段階 行うこと
設計 どんな機能を持たせるかを決め、回路や配置を設計する
材料の準備 高純度のシリコン結晶を薄く切り、表面を整えたウエハーを作る
回路の形成 ウエハーに薄い膜を作り、光でパターンを転写し、不要な部分を取り除くなどの加工を繰り返す
分割・組み立て チップごとに分け、外部と電気をやり取りできる形に組み立てる
検査 動作や品質を確かめる。検査は最後だけでなく、製造の途中にも行う

ウエハーは、多くのチップを一度に作り込むための薄い板です。SUMCOは、シリコンの結晶からウエハーを作る加工・研磨・洗浄の工程を説明しています。SUMCOの製造工程

その上に回路を作る工程では、成膜、露光、エッチングなどの加工を重ねます。露光は光を使ってパターンを転写する工程、エッチングは不要な部分を除く工程です。完成した回路をチップとして切り分け、保護と外部接続のためのパッケージに組み立てます。ASMLの製造工程解説

完成した小さなスイッチを、ピンセットで一個ずつ並べているわけではありません。 材料の一部に必要な性質や形を作り込み、それを電気的につなぐことで、非常に小さな回路を実現しています。

半導体のニュースを読むときは、三つの違いに注目する

半導体の基本が分かると、工場への投資や新製品のニュースも読み分けやすくなります。確認したいのは、次の三つです。

  • 何をする半導体か。 計算用のチップなのか、メモリなのか、電力を扱うものなのか。
  • どの工程の話か。 材料、設計、回路を作る製造、組み立て・検査のどこか。
  • 何が改善したのか。 計算速度なのか、記憶容量なのか、電力損失なのか。

半導体業界には、設計と製造の両方を担う企業だけでなく、設計に特化するファブレス企業や、製造を受託するファウンドリーもあります。材料・装置の企業も別の役割で製造を支えます。ASMLによる業界の役割の説明

半導体を「スマホやパソコンの頭脳」とだけ捉えると、記憶や電力、センサーの仕事が抜け落ちます。材料の性質を利用して電気を制御し、その組み合わせで多様な役割を実現する。ここまでつながれば、半導体は一つの謎の部品ではなく、身近な機器を分担して支える技術として見えてきます。

出典・参考資料

  1. 東芝デバイス&ストレージ「1-1. 半導体とは何か」 ↗確認日:2026.09.23
  2. 東芝デバイス&ストレージ「MOSFETとは?」 ↗確認日:2026.09.23
  3. 東芝デバイス&ストレージ「1-1. ロジックICとは?」 ↗確認日:2026.09.23
  4. 東芝デバイス&ストレージ「トランジスターとは」 ↗確認日:2026.09.23
  5. ASML「The basics of microchips」 ↗確認日:2026.09.23
  6. キオクシア「NAND型フラッシュメモリとは」 ↗確認日:2026.09.23
  7. ソニーセミコンダクタソリューションズ「イメージセンサー共通」 ↗確認日:2026.09.23
  8. 東芝デバイス&ストレージ「パワー半導体」 ↗確認日:2026.09.23
  9. Texas Instruments「アナログ半導体」 ↗確認日:2026.09.23
  10. SUMCO「シリコンウェーハの製造方法」 ↗確認日:2026.09.23
  11. ASML「Six crucial steps in semiconductor manufacturing」 ↗確認日:2026.09.23
  12. ASML「How microchips are made」 ↗確認日:2026.09.23